都立の大問5は、他の自治体には余りない「現古融合」という形の文章の読解になります。
とっつきにくさを感じてしまいがちですが、慣れてしまえば間違いなく得点源にできる部分です!
今回は、そんな都立国語大問5を短い時間で確実に解くコツを、過去問分析とともに紹介していきます。
なお、都立共通国語全体の傾向と対策はこちらです。時間配分や解く順番などについて詳しく説明しています。
東京都教育委員会のホームページから、実際の問題も見られます。
取り上げるべき内容が多く、超大作となってしまいました💦。
必要に応じて目次から飛ぶようにしてください。
それではいきましょう!
大問5の文章:現古融合と対談文
大問5は現古融合文の読解です。
また、二人の人物の対談形式の文章が題材となることが多いです。
現古融合文ってそもそも何なの??
なんだか難しそう😥
現古融合文とは?
現古融合文とは、簡単にいうと古典についての文章(鑑賞文)です。
現古融合文という名称自体は正式なものではありませんが、大問5の出題形式を表した言葉で、塾などでは一般的かと思います。
文章そのものに古典の文章が引用されることも多いですが、文章A・Bという形で、文章Bの方が丸々古典の文章という場合がほとんどです。
大問5全体の出題形式として「現古融合問題」という場合もあります。基本的には大問5がどのようなものかを理解していれば、どちらでもよいですね。
現古融合の問題集はあまり売られておらず、実際の過去問か模試で手に入れる以外なかなか手に入りません。数少ない現古融合対策の問題集として以下のものがありますので紹介します。
対談形式の文章
また、大問5の文章は二人の人物が古典の作品やその作者について対話している対談形式の文章がほとんどです。
対談文の年とそうでない年が安定しない時期もありましたが、ここ最近は6年連続で対談文が出題されており、この傾向は定着しているといってよいでしょう。
ただ、出典となる作品が少ないせいか同じ作者の文章が何年かおきに使われているので、題材探しが大変であることがうかがわれます。古典についての対談なんて、そんなにないですからね。
出典が限られるということは、文章の内容もある程度似通ったものになってくるということです。
そのため、模試や過去問の文章をしっかりと理解し、時代背景などの知識まで深められると大きなアドバンテージになっていきます。
古典について二人が話している文章が出題されるんだね!
大問5は大問4の前に解く
都立共通国語全体の記事でも詳しく紹介していますが、都立国語は大問を1→2→3→5→4の順番で解いていくことで、効率よく確実に点数を稼ぐことができます。
どうして大問5を先に解いた方がいいの??
理由は大きく分けて2つ!
全体の大問構成と、大問5に出題される設問にあるんだ。
まずは大問構成と正答率の関係を見ていくよ。
大問構成から見る大問5
都立国語では、大問4(説明的文章の読解)の最後の設問で200字作文が出題されます。(※200字作文の詳細はこちらをご覧ください。)
そのため試験問題を前から順番に解き進めていくと、200字作文を書き上げた後に大問5を解くことになりますよね。
作文がスムーズに書ければよいですが、作文に押されて大問5を解く時間が少なくなったり、大問5を解くことも考えながら時間に追われて作文を書いたりしていては、本来の力を十分に発揮できないように感じられませんか?
実際の正答率を見てみても、このことは明らかだと思われます。
大問5の正答率 ~低いのにはワケがある!~
東京都教育委員会が毎年6~8月頃に公表している入試の分析を見ると、大問5の正答率が大問3や大問4と比べて低い傾向にあることが分かります。
何年か分の正答率を具体例として示すとこんな感じです。
大問3 | 大問4 | 大問5 | |
令和3年度入試 | 74.6 | 69.6 | 51.6 |
令和2年度入試 | 82.2 | 74.6 | 73.6 |
平成31(令和元)年度入試 | 63.7 | 72.1 | 64.6 |
しかし、「ということは大問5は難しいのか」というと、決してそんなことはありません。それはこの記事を読み進めていただければ分かるはずです。
では、なぜ大問5の正答率が低いのか。大きく分けてこの2点だと思います。
- 大問を1から順に解いていて時間が足りない
- 文章の読みにくさに圧倒されて冷静に解けない
1については、ここまで述べてきた通りです。大問4を解く前に解きましょう。
2について、実は大問5は文章自体の難易度に比べて設問自体は簡単なものが多いです。なんなら文章を読まずに解けてしまう問題もあるので、以下で一つずつ紹介していきます。
文章を読まずに解ける問題
まず大前提として、文章は読まなければいけない!!
このことは忘れないでください。
都立国語は平均点が高いので「差をつけられない」ための勝負です。それなのに文章を読まないなんて自ら点数を捨てるのと同じです。文章を読むのが苦手なら読む練習をしなければ(させなければ)いけません。
その上で、文章の内容を理解していなくても解ける問題があるため、文章が難しくても気落ちする必要はないいということです。
以下で、具体的に出題される問題を紹介していきます。
文法
1、係り受け(修飾・被修飾の関係)
2、助詞・助動詞の用法
係り受け(修飾・被修飾)
ある一文の修飾語に傍線が引かれ、その修飾語が詳しく説明する文節を選ぶ問題です。
「○○」とあるが、この言葉が直接かかるのは、次のうちどれか。
という形で出題されます。
修飾・被修飾の関係は少し難しいと感じる生徒も見られるので必要に応じて対策しておくとよいでしょう。
ただ、令和3年度入試ではこの設問で出題ミスがあり受験生全員に得点を与えるということがあったので、今後この設問の出題は慎重に行われるか、出されても答えが明らかなものしか問われないでしょう。
助詞・助動詞の用法
本文の助詞もしくは助動詞に傍線が引かれ、それと同じ(異なる)意味・用法のものを選ぶ問題です。
最新の令和4年度入試では、本文中の「の」4つに傍線が引かれ、仲間外れを選ぶ問題で
C(本文)のア~エの「の」のうち、他と意味・用法が異なるものを一つ選び、記号で答えよ。
という形でした。
本文の一か所のみに傍線が引かれ、それと同じ使われ方のものを選択肢から選ぶ出題パターンもあります。
対策については、都立共通のレベルなら「どう言い換えられるか」に加えて「直前の単語の品詞」の2点を比べる練習をすればよいでしょう。
文法は詳しく問われない
口語文法についての問題はほぼ毎年、上記の片方が出題されます。出題されない年もありましたが。
ただし文法用語をみっちりと覚えていなければいけないようなものではありません。
具体的な設問を見て気づいたかもしれませんが、学校で教わるような文法用語は問題文に一切使われていません。(文節、修飾、単語、助詞など)
学習指導要領でも文法用語そのものを覚えることは目指されていません。都立入試もそれを踏まえて、文法の専門性は重視せず、いかに言葉を適切に運用できるかを問う(できているかは別として)方針であることが分かります。
そのため都立に限って言うならば、文法の対策としては過去問や模試を解き、分からないと感じたら類題に取り組む程度で十分であるといえます。
文法単体というよりも、文法を含めて各大問を時間内に解く練習に重きを置くべきです。
古典
1、歴史的仮名遣い
2、現古対応
古典についての設問は上記の2種類で、どちらか一方は必ず出題され、両方が出題された年もあります。
歴史的仮名遣い
本文の古典単語4つに傍線が引かれ、それらの仮名遣いについて以下のように問われます。
文中の傍線を付けたア~エのうち、現代仮名遣いで書いた場合と異なる書き表し方を含んでいるものを一つ選び、記号で答えよ。
言い回しが難しいですが、簡単にいうと「書いてある通りに発音しないもの」を選ぶ問題です。
例えば「あはれ」は音読する場合「あわれ」と発音しますよね。
古典での仮名遣いを歴史的仮名遣い、今私たちが用いる仮名遣いを現代仮名遣いといいます。
この例だと「あはれ」=歴史的仮名遣い で、「あわれ」=現代仮名遣い です。
傍線が引かれた歴史的仮名遣いのうち、今(=現代仮名遣い)では発音が変わるものを選べということですね。
今回は大問5の解説なので詳細はまたどこかで😓。。。
現古対応
指導者によっては現古一致問題と呼ぶ場合もありますが、どちらでも構いません。(ここでは現古対応でいきます)
細かく分ければいくつかのパターンがありますが、まずは最新の令和4年度入試での出題を見てください。
「御縁」(古典の現代語訳中の単語に傍線)とあるが、B(対談文)に引用されている和歌において「御縁」に相当する部分はどこか。次のうちから最も適切なものを選べ。
これだけだと少し分かりにくいかもしれません。
基本的には現代語訳/古典の単語に傍線が引かれ、それに対応する古典/現代語訳を選ぶ(実質書き抜き)問題です。
もう少し嚙み砕くと、「現代語訳→古典」もしくは「古典→現代語訳」で対応する言葉を探すといえばよいでしょうか。
一見すると古典をしっかりと読まなければいけないように感じるかもしれませんが、英語と違い古典は現代日本語と語順が同じであるため、漢字・句読点などから対応する言葉を機械的に見つけることができます。
以上、文法と古典で2種類ずつ、文章を読まなくても解ける問題を紹介しました。
文章の内容が難しかったとしても、これらの問題は確実に得点できるようにしましょう。
いろんな問題が出されるね。
それじゃあ実際、どんなことに気を付けて解けばいいの??
大問4の前に解くのは分かったけど
他にも大問5を解くコツをしりたいなぁ。
大問5を解くコツは何といっても古典を読まないこと!
この解き方に慣れると、大問5を得点源にできるよ。
えっっっ!?
本当に読まなくていいの!?
詳しく教えてください!!
古典は読まない
都立共通に限って言えば、出題される古典そのものは読む必要はありません。
もちろん読めるに越したことはないですし、私立や独自問題に対応するには読み慣れておく必要はありますが、共通問題では読まずに問題を解くことができます。
都立では古典そのものの読解は問われない
古典について出題されるのは、先に紹介した「歴史的仮名遣い」と「現古対応」の問題のみです。
そしてこれらの問題は文章を読まなくても解けるので、当然古典も読む必要はありません。
とはいえ、古典の内容が全く分からずに現古融合文の読解問題を全て解けるかというと、さすがにそこまで甘くはありません。
ではどうするのか。
古典の内容は、現代語訳と注釈で捉えるようにします。
現代語訳で古文の内容を捉える
大問5は文章A・Bという形で複数の文章が出題され、その片方が古典の作品からの抜粋であることが多いです。
この場合にはほぼ必ずと言ってよいほど、その現代語訳が点線で囲まれて古典の後に書かれています。
あるいは現融合文そのものの中で引用されてる古典の文章も、現代語訳かそれに相当する内容が書かれます。
「これが現代語訳だ!」と分かりやすく書かれているものがほとんどですが、部分的に解釈しながら文章が進んでいくような場合、しかもその内容を根拠に解かなければいけない問題は難易度が高くなりますね。
いずれにしても、大問5に書かれる古典の内容は現代語訳から理解すればよいですし、古典を自力で読めなければ解けない問題は都立共通では出題されません。
注釈は忘れずにcheck✅
これは大問3でも4でも、読解問題を解く際には必ず意識するべきことですが、大問5の場合には一層その重要性が大きくなります。
注釈とは、問題の出題者(文章の作者ではなく)が受験生に向けて「この文章だけでは分からないだろうから教えてあげるね」と、文章のこれまでの内容や前提となる情報を教えてくれているものなのです。
注釈は出題者からのヒントであると考えてもよいです。
もちろん単に難しい言葉だから説明している場合も多いですが、中学生ではよくわからない用語がたくさん出てくる現古融合文においては、文章の内容を理解する大きな手掛かりとなります。
文章中の古典の現代語訳が注釈に書かれている場合もあるので、特に大問5の場合は注釈は必ずチェックです。
発言の役割を問う問題
大問5の大きな特徴として対談形式であることや、発言の役割を問う問題も忘れてはいけません。
対談形式でない文章の年も、文章中の表現に傍線が引かれてその部分の意図や役割を問う問題は出題されました。
この設問は学習指導要領の「話すこと・聞くこと」に対応したもので、指導要領が改定されても領域として残っている内容なので今後も続いていく傾向だと考えられます。
発言の役割を問う問題は、対談している片方の人の名前に傍線が引かれその発言全体について問われる場合と、発言の一部に傍線が引かれその部分について問われる場合がありますが、どちらの以下のような設問になります。
この発言が対談の中で果たしている役割を説明したものとして最も適切なのは、次のうちどれか。
意識するポイントは傍線の前後で対談の内容がどのように変化したかです。
特に
- 傍線の発言は直前の内容に賛成か反対か
- 傍線の前後での話題の変化
の2点を意識すると、適切な選択肢を選ぶことができます。
なんとなく指定された段落の前後の内容の変化に着目する、大問4の段落の役割問題と似ているように感じられたかもしれません。
その通りです!
選択肢に使われる言葉は異なりますが、対話文でも紙で見るため実質「書くこと」の論の進め方を考えることと大差がないのです。(ということで、大問4の解説はこちら!笑)
最後に
薄々感じているかもしっれませんが、今回の記事は過去最大の長編となってしまいました。
大問5はかなり特徴的で取り上げるべき内容も多いのでとても長くなってしまいました。
こんなはずでは😓。。。
記事を作るのに数日かかってしまい、もうへとへとです💧。
それぞれの内容について、特に古典対策については個別に記事を書かなくてはいけないなと感じました。頑張ります!😇
ですが最後に大切なことをもう一度。
大問5はきちんと対策をして慣れてしまえば、必ず得点源にできる!
これは間違いないです。
指導者の方も、ここまで読めばあとは各々過去問分析して受験生を正しく導けると思います。頑張りましょう✊
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
それでは!
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